小説24 須藤4

下校の途中、私は今日も昨日と同じコンビニへと立ち寄り、雑誌コーナーへと真っ直ぐ向かった。しかし今日はマンガの発売日ではない。今日の目的は他にあった。私は昨日雑誌コーナーで立ち読みした雑誌をもう一度手に取る。ページを捲り、アイドルユニット『℃-ute』の集合写真ところで手を止める。昨日とまったく変わらない笑顔で写っている彼女達ががそこにいた。
写真なんだから変わらないのは当然か・・・。




私はあのオーディションに落ちて以来、二度とアイドルになるなんて言わなかった。両親は夢が叶わなかった娘が落ち込んでいるんじゃないか、と心配して慰めの言葉をかけてくれた。
「ああいうのに選ばれるのは特別な子達なんだよ。まあさがダメなわけじゃないんだからね」
と・・・。私は別に落ち込んでなどいなかった。いや、本当は落ち込んでいたかもしれない。正直なところ、よくわからないというのが、正しいかもしれない。ただ私は両親のその言葉で落ち込んでしまったことだけは、はっきり覚えている。
そんな意味で言ったのではないと頭ではわかる。でも・・・、私は特別ではない、と両親からはっきり言われてしまったのだから。




私は雑誌のページをゆっくりと捲り、彼女達を見る。
それにしてもいい笑顔だなぁ。
私は素直にそう感じていた。彼女達はこの笑顔の裏側で、たくさんの努力をしているのだろう。きっと楽しいことばかりじゃないはずだ。それでも彼女達は笑っている。少なくとも私にはとても満足そうに見える。
私は雑誌から目を離し、ガラスに映っている自分を見る。そこに写った自分はぼんやりとしているが、満足という言葉からは程遠い表情であるという事は分かる。
自分は普通の子なんだ。
私は今まで自分にそう言い聞かせていたのかもしれない。そうすれば楽だから・・・。でも本当は違う。あきらめたフリをしていたのだ。


「―――歌って踊るクラブなんだ―――」


そのとき転入生の言葉が、また私の頭の中をよぎった。
「明日・・・、声をかけてみよう」
私はそう決心して雑誌を閉じた。