小説8 菅谷2

うぅ、お腹すいたなぁ・・・。
私はそう思いながら、自分のお腹をさする。今、授業は6時間目の終わりにさしかかっている。なんでこんなにお腹が減っているのか?答えはとっても簡単。私はお昼ご飯を食べ損ねたからだ。緊張の自己紹介が終わって気が抜けたのか、1時間目の授業が始まってすぐに、ついウトウトっとなってしまったのはなんとなく覚えているけど、気がついたら授業はすでに5時間目になっていた。
ありえないよねホント・・・。でも誰か起こしてくれたっていいのに・・・。
「みんな冷たいなぁ・・・」
私は誰に言うでなく、ボソリと小さく呟いた。
でもこれはどう考えても私のせいかぁ。お母さんにも毎日「梨沙子は寝すぎだよ」って言われてるし。うん、気をつけよう。それはそれとして・・・、やっぱりお腹すいたなぁ。
私はもう一度自分のお腹をさする。腹の虫はすでに数え切れないくらい鳴っていた。
でもがんばれ私!!この後やらなきゃいけない大事なことがあるんだもんね。
そんなことを考えているとチャイムが鳴り、6時間目の授業が終わった。
「よし!!」
私はそう気合を入れてから後ろを振り返って、須藤さんに「あのさ」と声をかけた。須藤さんはちょっと驚いたような顔をしていた。
「須藤さん、私、部活やりたいんだけど、どうしたらいいかな?」
「さあ・・・。職員室で聞けば分るんじゃない?」
「そっかぁ。あのさ、『ダンシング部』ってある?」
「はぁ!?なにそれ?」
「うん、歌って踊るクラブなんだけど・・・。私、前の学校でそれやってたんだ。で、この学校でも続けたいなって」
「あっそう・・・」
須藤さんはまったく興味がないような口ぶりでそう言った。ここまでの会話で、すでに気付いているけれど、私は一応確認するように尋ねる。
「ない・・・かな?」
「さあ・・・、たぶんないと思うけど。徳永にでも聞いてみたら?あの子そういうのに詳しいみたいだし」
「そうなんだ。ありがと」
「別に」
須藤さんはそう言うと、スッと立ち上がった。
「あっ、あのさ、須藤さんは何かクラブやってるの?」
「私は何も。帰宅部。じゃあ」
須藤さんはそう言うと、教室のドアに向かい歩いていってしまった。
う〜ん、なんかそっけない子だなぁ・・・。もうちょっとお喋りしたかったのに。でもすごい綺麗な子だよなぁ・・・。髪の毛もサラサラだし。
私は須藤さんの後姿を見ながら、そんなことを感じた。