小説9 徳永2

だぁ〜、やっと終わった〜〜〜。
6時間目のチャイムが鳴ると同時に、私は座ったまま、机に倒れこむように体を投げ出して目を閉じた。
はぁ・・・、授業ってなんでこんなに長いんだろ。ホント疲れるよ。ゆとり教育なんて大人はいうけど、全然そんなこと無いよね〜。毎日毎日こんなところに座って勉強するなんて、まさに地獄だよ。
そんなことを考えながらグッタリとしていると
「あのー、徳永さん」
と声をかけられた。私は同じ姿勢のまま目を開けて、声のするほうへと視線を向けた。そこには転入生の菅谷梨沙子が立っていた。
「なに?『すが―――」
―――さこ?』と、言いかけて私は口をつぐんだ。
あぶないあぶない。ついつい思ってることを言いそうになってしまったよ。まあ本人が言ったことだから、別に問題ないかもだけど・・・。ん〜、でもまあ最初はちゃんと名前を呼ばないとね。
私は軽く咳払いをしてから
「どうしたの、菅谷さん?」
と言いなおした。私が慌てている風に見えたのか、それを見た『すがさこ』は、ちょっとだけ不思議そうに首をかしげていた。
「あのさ、私、部活やりたいんだけど・・・。『ダンシング部』ってある?」
『ダンシング部』?・・・この子、何を言ってるんだろう?ボクシング部ならあるけど。
「何それ?」
「うん、歌って踊るクラブなんだ。私、前の学校でそれやってたんだ」
「ふーん。そんな部活がある高校があるんだ。なんていうか、え〜と・・・、すごい未来的だね」
「・・・前衛的、のこと?」
「あ〜、それそれ」
・・・なんとなくこの子に訂正されると腹が立つなぁ。まあいいけど。
「ていうか、それ部活になんの?」
「うん、すっごく楽しかったよ。だからこの学校でもやりたいな〜って思ってたんだけど、でもやっぱりないんだ・・・。残念だなぁ、困ったなぁ・・・」
『すがさこ』はそう言いながらも、ニコニコと笑っている。
全然困っているようには見えないけど・・・。後、微妙に質問にも答えてないし。・・・まあ頼られてるみたいだし、教えてあげてもいいか。
「なくても作れるよ」
「えっ、ホント?やったぁ。どうしたらいいかな?」
「先生にオーケーもらって、部員を集めて―――」
「そうなんだ、ありがとっ!!じゃあさっそく先生に言ってくるね!!」
『すがさこ』はそう言うと、ものすごいスピードで教室から飛び出していった。
あ〜あ〜、行っちゃった・・・。ていうか人の話は最後まで聞けよっ!!・・・まあいっか。
私は軽く伸びをしてから、教室を出た。