小説15 徳永3

「ふぁ〜ぁ・・・」
眠たいなぁ・・・
私はいつもどおりの通学路を、あくびしつつ歩いていた。角を曲がって後数十メートルも歩けば校門にたどり着く。
ああ、今日も地獄のような一日が始まるのか・・・。まあ眠ればすぐか・・・。
私はあくびをもう一つしながら角を曲がり、校門前の光景を見て体が固まってしまった。口もあくびの形で開きっぱなしだ。理由は校門前で転入生の『すがさこ』が大きな紙を両手で持って「部活やりませんかー」と叫んでいたからだ。
「嘘でしょ・・・」
いやいやいや・・・、確かになくても作れるよって言ったよ。言ったけどさ・・・。でも普通いきなりこんなことする?・・・やっぱ変わってる。か〜なり変わってるよね〜。
そう思いながら私は校門のほうへと歩き出した。私に気づいた『すがさこ』は
「おはよう!!」
と、元気よく言ってきた。
おはようじゃないでしょ、おはようじゃ・・・。
そう思いつつ、私は挨拶を返す。
「・・・うん、おはよう。・・・何やってんの?」
「ダンシング部の部員募集だよ!!」
それは見たら分るけど・・・。
私は『すがさこ』が持っている紙を見た。『ン』が『ソ』になっていた。これじゃあ『ダソシソグ部』だ。
・・・ただでさえよくわかんない部なのに、まるっきり意味不明の部になってるよ。『ダソシソグ』ってものすごい言いにくいし!!
本人は気づいてないのか、相変わらずのニコニコ顔だ。
「・・・がんばって。応援してるよ」
「うん、ありがとう!!」
そう言葉を交わして、私はその場を離れた。『すがさこ』はその後も校門を通る生徒一人一人に「部活やりませんかー」と声をかけていた。私はその声を聞きながら、この出来事はたぶんちょっと話題になるだろうな、と感じていた。新聞部部長の勘である。しかし私のモットーは、みんなが知らないことをいち早く知ることにある。
「これはネタにならないよねぇ・・・」
私はそう呟いてから、またあくびをした。