小説16 嗣永3

「・・・なに、あれ?」
朝、学校に来ると校門前で『すがさこ』が妙なことをやっていた。生徒一人一人に「部活やりませんかー」と言っている。私が通りかかった時も、同じ言葉をかけた後、気づいたように「あっ、同じクラスの子だよね?」と、言ってきた。
足を止める気なんてまったくなかったけどしょうがない・・・。
私はよそいきの声で応える。
「うん、私、嗣永って言います。よろしくね、菅谷さん」
「うん、よろしく!!あっ、嗣永さんって何か部活やってる?もしよかったらダンシング部どうかな?」
『すがさこ』はそう言うと、自分の手に持っている紙を、私の目の前にやる。
はあ?ダンシング部?何言ってるの、この子。・・・ていうか『ダンシング部』って書いてあったんだ。てっきり『ダソシソグ部』だと思ってたけど。字もまともに書けないの?はぁ、やっぱり頭悪い、この子。
「ごめんなさい。私、習い事が忙しくって」
「そうなんだ・・・。引き止めてごめんね」
「いいえ、勧誘頑張ってね」
「ありがとう」
「じゃあ」
『すがさこ』とそんなやり取りを交わしてから私はその場を離れた。当然のことながら本当は習い事などやっていない。元々クラブ活動なんてものに興味はないし、何よりあんなバカな子には付き合ってられないので、適当にあしらったのだ。
「まったく信じられないわね・・・」
私はため息をつき、下駄箱を開ける。すると中には上履きのほかに手紙が入っていた。手にとって見てみると、宛名は吉澤先輩からだった。
『放課後、体育館裏に来て下さい』
中身を読んでみると、そう書いてあった。普通なら飛び上がって喜ぶところだろうけど、私にはなんの感動もなかった。
「ふぅ・・・、単純」
私はもう一度ため息をついてから手紙をカバンにしまい、教室へ向かった。