小説17 須藤3

私は今日もいつものように、一番乗りで教室に来て、自分の席に座り、本を読んでいた。でも別に学校が好きだから早く来ているわけではない。むしろ学校は嫌いだ。理由は人が多いから。昔から人の多いところは苦手だ。でも今は教室には私しかいないから、とても静かだ。普段、人で溢れ、喧騒が絶えない教室に誰もいないという、なんとなく特別な時間を味わうために、わざわざいつも早く登校しているのだ。
よく考えると私、めんどくさい事してるなぁ・・・。
しばらくしてポツポツと生徒が教室に入ってきたかと思うと、瞬く間に静寂が壊されてしまったので、私は本を閉じ窓の外を眺めることにする。これもいつも通りの行動。まだHRまで時間があるので、校門からぞろぞろと生徒が登校してきている。しばらくぼんやりと見ていると普段と違うことがあった。一人の女生徒が校門前でしゃがみこんだかと思うと次の瞬間立ち上がり、大きな紙を両手で持って、なにやらし始めた。
「・・・何、あれ?」
よく見ると同じクラスに来た転入生だった。通り過ぎる生徒に声をかけているようだが、ここからでは何をしているのかわからない。私は窓を開けて、それを観察してみた。すると転入生から「部活やりませんかー」と言う声が聞こえてくる。どうやら昨日言っていた『ダンシング部』とやらの勧誘をしているようだ。
「まったく、朝っぱらからなにしてんだか・・・」
私はそう呟いてから、しばらくその光景を見ていた。


『―――歌って踊るクラブなんだ―――』


私はふいに昨日、転入生が言った言葉を思い出していた。初めそれを聞いたとき、私は特に何も感じなかった。でも今は少し違う。昨日コンビニで読んだ雑誌の事があったからだ。
歌って踊る、か・・・。
「・・・アイドルと一緒だな」
私はそんなことを呟いてから窓を閉めた。