小説19 夏焼3

私は昨日と同じく昼休みに登校した。ブラブラと廊下を歩いていると、向こう側から走ってくる清水と出くわしたので声をかける。
「おう、どーした?そんなに慌てて」
「あっ、夏焼さん。うん、ちょっとね・・・」
清水はなにか言いにくそうにそう言ったので私はピンときた。
「なんだ、又パシらされてんのかよ。昨日言ったろ?あんな奴らの言うことなんか聞かなくっていいって」
「うん、そうなんだけど・・・」
清水は口ではそう言うものの、うつむいてしまった。
まったくこいつは・・・、しょうがねぇなぁ・・・。
「おい、ちょっと来いよ」
私はそう言って清水の腕を掴み、教室のほうへと歩き出した。
「えっ?ちょっ、夏焼さん。私、購買に行かないと・・・」
「いいから、ほらっ!!」
私は清水の腕を掴んだまま、強引に教室へと引っ張っていった。




教室に着いた私は、そのまま教室の後ろのほうに陣取っている矢口(ちなみにこいつの名前が矢口って知ったのは清水に聞いたからだ)たちの前まで行き、おもむろにこう言う。
「ねぇ、購買行ってきてくんない?」
突然言われた矢口はビビりながらもこう言い返す。
「そ、そんなの自分で行けばいいじゃん」
「あんた、人にはいうくせに自分の時はそれかよ。ほら、金は渡すからさ。・・・さっさと行けって」
最後はちょっと睨みを利かながら言った。
「わ、わかったよ・・・」
矢口はそう言うと、周りに居た仲間と共に、渋々購買へと向かった。私は近くにあった机に腰掛けて、清水のほうを向き、明るい声で言う。
「な?あんな奴らたいしたことないだろ?」
清水は「うん」とうなずきはしたものの、うつむいたままだった。
ま〜だビビってんのかよ・・・、しょうがないやつだなぁ。
そんなふうに思っていると
「そこ退いて」
と声をかけられた。声のするほうを見ると、熊井が立ってジッと私を見ていた。どうやらこの席は熊井の席だったようだ。私は動かずに熊井を睨む。熊井のほうも直立したまま私から視線を外さなかった。というか、微動だにしなかった。
昨日のこともそうだけど、こいつの場合、睨んでくるというより、ただ無表情なだけなのか?
そんなふうに感じたけど、こっちが先に動いたらなんとなく負けた気がするので、私もひたすら動かなかった。しばらくそのまま沈黙が続いていると、矢口たちが戻ってきたので、私はパンを受け取り
「清水、屋上に行こうぜ」
と、言った。清水は自分を見る矢口たちの視線を気にしつつも、私についてきた。