小説22 徳永4

放課後、私はいつものように保健室にいた。室内に二つある内の奥側のベッドにカーテンを閉めて寝転んでいた。と言っても別に体調が悪いわけではない。私がここにいる理由は放課後、この保健室が生徒の悩み相談室になるからだ。その間、私はここに隠れて、先生に悩みを打ち明けにきた生徒の話をこっそり盗み聞きをするのだ。
あんまりいい趣味じゃないことはわかっているけど、これも情報を仕入れるため、新聞部のためだからしょうがないよね。
10分ほどすると、ガラっとドアが開く音がしたので、私は気づかれないように息を殺した。
さて、今日はどんな話が聞けるかな〜♪
あくまで、新聞部のためである。
「こちらへどうぞ」
「ええ、失礼します」
「こんなところで申し訳ありません。あまり自由に使える場所がないものですから」
「いえ、結構ですよ。こちらこそすいません、急に訪ねたりして」
おやや?いつもと雰囲気が違うなぁ。この声は・・・、中澤先生だね。いつもは保健の石川先生なのに。それに一緒に入ってきたのは誰だろ?声で男の人ってのは分かるけど、明らかに生徒じゃないよね〜。・・・もしかして中澤先生の彼氏!?これはスクープの予感だぞ!!
私はすぐさま胸のポケットから手帳を取り出し、そして聞き耳を立てた。
「で、菅谷さん、お話と言うのは?」
「ええ、娘のことなんですが・・・」
菅谷さん?娘?・・・ということは、相手は『すがさこ』のお父さんか。な〜んだ、中澤先生の彼氏じゃないのか。ちょっとがっかり。
期待外れの展開に気が緩んだのか、急に鼻がむずがゆくなる。
や、やば!!くしゃみ出そう。こういうときは、何か別のことを考えて気をそらして・・・。
私はそれから中澤先生たちが保健室を出るまで、くしゃみを我慢することに集中した。