小説31 夏焼5

昼休み、私が教室に入ると、清水は教室で弁当を食べていた。今日は矢口たちにパシらされてないようだ。
ふふん、まあ私が昨日ガツンと言ってやったからね。
一人そう満足してから気づいたことがあった。清水は机を隣の席の奴とくっつけて弁当を食べている。
あれ?あそこって確か空席じゃなかったっけ?
そう思いながらその席に座っている奴を見る。見たことも無いやつだった。私は一旦自分の席へ向かい、椅子を持って清水のところへと行くと、それに気づいた清水が声をかけてくる。
「あ、夏焼さん、おはよう」
「おう。・・・まあ、おはようってのには遅いけどな」
そう言ってお互い少し笑ってから、私は視線をずらし質問をする。
「誰だ、こいつ?」
「転入生の菅谷さんだよ。あっ、そうか。会うのは初めてなんだよね」
「ふーん、転入生か」
「『すがさこ』です。よろしくね」
転入生はそう言って、私ににっこりと笑いかけてきた。
『すがさこ』?さっき清水は菅谷って言わなかったか?
「・・・おう、夏焼だ。ヨロシクな」
私はそう言って椅子に座り、途中で買ってきたパンを食べ始めた。食べながら、しばらく雑談。途中で清水が『すがさこ』に質問する。
「ねぇ、菅谷さん。ダンシング部どうなった?部員は集まった?」
「ううん、それが全然なんだ」
「ダンシング部?なんだそれ?」
私はパンをほおばりながら、そう質問した。
「うん、歌って踊るクラブなんだけど。私、前の学校でそれをやってて、この学校でもやりたいなと思ってたんだけど、ないっていうから今部員を集めてるところなんだ」
「ふーん、そうなんだ」
そりゃまあ、ご苦労さんなこった。
ちなみに、というか当然かもしれないが、私は部活動をやっていない。団体行動が苦手というのもあるし、そもそも汗を流して走り回ったり、必死で練習する意味がわからないのだ。その先にあるものが、私にはまったく見えない。だからやらない。
・・・つっても、先のことなんか全然考えてないけどね。