小説32 須藤5

はぁ・・・。
昼休み、私は自分の意気地のなさにあきれていた。今日の朝、私はHRが終わると、昨日決心したとおり転入生に声をかけた。確かに声はかけた・・・が、目的は果たせなかった。
「―――私、ダンシング部に入りたい―――」
たったそれだけのことなのに・・・。
私は授業が終わるたびに、転入生に声をかけようとした。しかしかけられないまま、現在は昼休みになっている。転入生は隣の席の清水と机をくっつけて、お昼を食べている。途中から夏焼も一緒だった。
なんていうか・・・、珍しい組み合わせね。
そんなことをぼんやりと思っていると、ダンシング部の話題になったので、私はその会話に集中した。
・・・まあ集中しなくても、前の席だから聞こえてくるんだけどね。
「私、ダンシング部に入りたい」
そう言ったのは清水だった。
嘘でしょ?まさか先を越されるなんて。名前が佐紀だけに・・・、って私、何考えてんだろ。かなり動揺しちゃってるよ。落ち着け私。
そう自分に言い聞かせて、深呼吸をしていると
「まあ入ってもやってもいいかな」
と言う声が聞こえた。今度は夏焼からだった。
えぇっ!!あの夏焼がダンシング部に入るの?おいおい、あんた不良なんじゃないの?そんなの似合わないでしょっ!!
そんなことを考えていると
「よーし、じゃあ3人でがんばりますか〜!!」
と、転入生が元気よく言った。
まずい、このタイミングを逃したら、もしかしたら入れないかもしれない!!
「あ、あのさっ!!」
私は気づいたら立ち上がって、そう声をかけていた。声が大きかったのか、3人とも驚いたように私を見ていた。
「え〜っと・・・、その・・・、あの・・・。わ、私も入ってあげてもいいけどっ!?」
そう言ってしまってから、私は後悔した。
何?今の言い方・・・。もっと普通に「私も入れてくれるかな?」って言うつもりだったのに・・・。あぁ、ホント私はダメなやつだ。
そんな風に思っていると
「ホント!?やったぁ!!ありがとう!!」
と、転入生は言ってきた。その笑顔には曇りが無いように見えた。
・・・この子、いい子なのかもね。